迷宮の王

狼は眠らないの作者の初期作。全3巻で去年から今年にかけて出版されたようだけど、版元の講談社の投稿サイトセルバンテスとやらが先月で終了されるのを期に書籍版を無料で公開という太っ腹な対応をしていたので終わる前に一気に読んだ。
セルバンテス自体はレイアウトの変更が可能なんだけど、文字の大きさが小さすぎる。大にしても小さいってなんだそれ。
ダンジョン(迷宮)の階層ボスであるミノタウロスが偶然冒険者としての恩寵を得て人間やモンスターを討ち倒しレベルアップし、最下層の主となるなかなか面白い設定。ただ、そこの迷宮からは離れられないし、会話ができるわけではないので拡げにくそうな印象。ミノタウロスを倒す存在としてある騎士とそれに連なる者のストーリーが裏で、というか二巻以降はこちらがメインで書かれる。んだけど、いきなり息子にバトンタッチしていて大丈夫かよと。その後は上の世代に遡ったりミノとは全く関係ない展開が続くので三巻で完結はいいところで終わったんでないかな。サラッとぶち込んでおいて飛ばした異人たちの戦いとか詳しく書かれなかったストーリーこそ気になるけど、書かれたら書かれたで本筋とは…なんて思うんだろうな。
意外に感じたのは誤字というか誤変換や脱字が多いこと。狼は眠らないでも報告受けたりで修正しているのだろうけど、最近は公開直後に読むことも多いのに一見した限りでは直すべき箇所は思い当たらないくらいなのに。書かれた当時とは原稿の見直し方が違うのかなとも思い、セルバンテスでは誤字指摘のフォームが見当たらない(会員登録すればあったのかもしれないけど、じきに終わるのに登録するのもなと考えしなかった)からなろうでの該当箇所を探してみたら、投稿版ではほぼほぼそこの記述は見つからず、書籍版での書き下ろしや表現の改変箇所らしい。ということはこの2年くらいにかけて書かれた箇所と推測されるのにこの多さは意外。書籍版もそのままだったのだろうか。それとも校正が入る前のものを公開したのかな?逆になろうではきちんと「このおなご」となっていたのに「こおなご」と「の」が抜けているようなところもあった。
主人公とその主家側から見た仇敵である公爵家からの視点で書かれた歴史は種明かし要素もあり面白く、こういうところは狼は眠らないでも出てくるなとこの作者の魅力のひとつなんだなと思ったり。それぞれがそれぞれの目的を持ち、それぞれの知見の中で思考するから複雑になったりかけ違いが思わぬ方向に向かったり。
辺境の老騎士は漫画で読めばいいかなーと手を出していないのだけど、読んでみようか悩むなあ。